近年医療の進歩により、肝硬変の患者様では薬を飲むことで腹水が改善するケースも増えてきました。しかし、いまだに薬だけでは腹水が改善しない、いわゆる“難治性腹水”を抱えて苦しんでいる方が多いのが現状です。 難治性腹水は、強い腹部膨満感や呼吸苦、食欲不振などを生じて全身状態を著しく悪化させます。特にがん性腹膜炎では、腹水を生じる原因であるがんの治療の継続が困難になるため、悪循環となります。 腹水を抜くと、その中の栄養分まで失い結果として衰弱が進むため、腹水を抜くのは最後の手段と言われてきました。
腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free and concentrated Ascites Reinfusion Therapy : CART)は、体から抜いた腹水をフィルターで濾過し、栄養分のみを点滴で体内に戻す治療法です。栄養分の喪失が抑えられるため、体力を落とさずに症状緩和が図れます。
従来のCARTは、フィルターが目詰まりを起こすと濾過ができなくなってしまうため、処理できる腹水量には制限があります。
特にがん性腹水は腹水中に細胞成分が多く含まれ、すぐに目詰まりが生じるために、がん性腹水に対するCARTはなかなか普及が進んでいないのが現状です。
そのため、現在要第2クリニック腹水治療センター長である松﨑圭祐医師が改良型CARTを考案いたしました。この方法により、目詰まりを起こしたフィルターを洗浄することで腹水濾過を継続することが可能になりました。
理論上は無制限に腹水の処理が可能になるため、原則として腹水を全量抜水します。腹水を全量抜水することで、腹水貯留による症状は最大限に緩和され、腹水中に漏れ出ていた豊富な栄養が静脈内に戻されるため、体力の改善も顕著となります。